MTAで神経を残す治療
歯の神経を守る:MTA歯髄(神経)温存療法
MTAとはケイ酸カルシウムを主成分としたMTAによる覆髄治療であり、従来の水酸化カルシウムセメントによる治療と比べて、高い確率で神経を残すこと(歯髄温存)ができます。
従来のむし歯治療とは…
大きな虫歯を治療したり銀歯の再治療等の際に神経が露出することがあります。従来はその際に神経を取る治療を行うことが一般的でした。
しかし、歯の神経(歯髄)は、歯に感覚を伝え、栄養を与え、その上ばい菌から身体を守る免疫のはたらきなどを受け持つ大事な組織です。また、神経を取った歯は歯根破折や感染なのど問題が起こりやすくなり、結果的に歯の寿命を大きく縮めてしまいます。
そこで生体親和性が高く 封鎖性の良いMTAセメントという材料を用いて露出した神経を直接覆い可能な限り神経を温存するMTA覆髄治療(歯髄温存療法)に取り組んでおります。
歯髄を残すことの大切さ
歯髄は、歯の最も内部にある神経や血管がある部分で、歯に加わる色々な刺激を感知することによって痛みからむし歯などの疾患を気付かせたり、歯髄内に存在する免疫細胞が細菌に抵抗したり、侵襲に対して第二象牙質を形成するなど、歯髄組織は防御機能として重要な役割を果たしています。
また、歯を失う原因には、虫歯や歯周病、外傷、咬合等様々ですが、最も多い原因が歯根破折で喪失歯の約6割を占めているといわれています。
歯根破折を起こすほとんどの歯が神経のない歯(失活歯)であり、過去に虫歯などが原因で神経を取る処置 がなされています。
ですから、神経を保存することが歯の寿命にとって非常に重要であるという認識のもと、神経を取らずに残す方法を心がけています。
MTA歯髄温存療法の適応ケース
- 虫歯と歯髄が非常に近接している。
- 虫歯と歯髄が一部交通している状態でも神経が感染を起こしていない場合。
- 温かいものが強くしみる症状がある際は、既に神経が不可逆的な感染をおこしてしまっている可能性が高いので、歯髄温存療法を試みても抜髄(神経を取る処置)が必要になる可能性が高くなります。
- 虫歯が大きくても自覚症状が出ていない場合には、高い確率で神経を残すことができます。すなわちC2(象牙質に至る虫歯)までの虫歯が適応症です。
- 既に神経が死んでしまっている歯や明らかな感染性の炎症を起こしている歯(C3)には適応外です。
MTA歯髄温存療法の流れ
う蝕検知液で虫歯だけを染めて、完全に除去する。露髄が起きた場合でも周囲に感染象牙質を残さない。

生体親和性がたかく封鎖性能良い、MTAセメントを用いて露髄部を直接封鎖します。その上にフローレジンを使用し、確実に接着封鎖する。

当日、あるいは後日型どりを行い、次回の来院時に詰め物を装着し治療が完了です。
■治療後一時的に痛むことがあります
MTA歯髄温存の直後は、虫歯を除去した際の刺激や覆髄処置の刺激によって、一時的に歯が過敏になります。冷たい物などでしみたりする場合がありますが、多くの場合経時的に軽減・消失していきます。
■治療後も痛みがひどいとき
MTA歯髄温存を行っても 処置後に症状が生じた場合や神経の生活反応が消失した場合は、通法どおり抜髄に移行する可能性があります。
■保険適用外の治療です
費用:2万5千円(税別)